逆転の発想がおもしろいマーケティング&PR事例3選

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「逆転の発想」とは、常識を覆すアイデアによって課題を解決し、思わぬ成果を生み出す力を指します。今回はそんな“想定外の一手”が光る施策を3つ厳選。空き家問題の新アプローチからフライパンの大検証、そして“間違い”を讃えるミュージアムまで、いずれも従来の発想を180度転換した事例です。

空き家問題を逆手に!「さかさま不動産」が実現する新マッチング

全国に増加する空き家を「貸す側が情報を出す」のではなく、「借りたい人のやりたいこと」を発信して見つけてもらう仕組みにしたのが「さかさま不動産」です。株式会社On-Coが運営するこのサービスは、不動産サイトの常識を逆転させた斬新な試み。借り手が「カフェを開きたい」「アトリエに使いたい」など具体的なアイデアを提示すると、空き家オーナーが「うちの物件を使ってほしい」と手を挙げる形でマッチングが進みます。

さらに利用料や手数料も不要という方針を貫き、地域の課題解決と新たなチャレンジを応援するスタイルを確立。東京・南麻布の元畳工場をギャラリー兼カフェに、名古屋の印刷工場跡をコミュニティスペースに、というように“活用法がわからない”物件が魅力的な場所へと生まれ変わっています。また全国17カ所に支局を設立し、コミュニティづくりや情報共有を進める「おせっかい集団」としての動きもユニーク。通常の不動産仲介業にはない「地域と人をつなぐ」姿勢が、多くのプロジェクト成功と高い継続率を生み出しているのです。

●参考

https://www.businessinsider.jp/post-289734

https://www.homes.co.jp/cont/press/rent/rent_01095/

https://prsj.or.jp/association/wp-content/uploads/2024/02/20230011grandprix.pdf

クレームを逆手に!3,520個のフライパン大検証「フライパンチャレンジ」

水も油も不要で簡単に作れると支持されてきた味の素冷凍食品の「ギョーザ」。ところがSNS上で「くっつく」という声が出始めると、同社はなんと「フライパンを送ってください」とユーザーに呼びかけました。これは普通なら避けたいクレームを、あえて逆手に取った大胆なアイデア。その結果、3,520個ものフライパンが全国各地から集まり、半年にわたる検証プロセスに突入します。

検証内容は特設サイトやnoteで公開し、フライパンを3Dスキャンして誰でも360度見られるようにするなど、透明性と遊び心が満載。企業としてはリスクもある取り組みでしたが、実際には「ユーザーの声に真摯に向き合う姿勢」として好評を博しました。さらに集めた知見をもとに2024年1月にギョーザの改良を発表し、2月にはリニューアル品を発売。クレームを「改良のチャンス」ととらえ、ユーザーを巻き込む形で課題を解決した好例としてSNSやメディアでも大きく話題になりました。

●参考
https://www.advertimes.com/20231128/article441205/

https://webtan.impress.co.jp/e/2024/01/23/46381

https://www.ffa.ajinomoto.com/enjoy/frypan/

味の素冷凍食品『冷凍餃子フライパンチャレンジ』SNSで集まったフライパンから新たなフライパンへ!
味の素冷凍食品株式会社のプレスリリース(2024年12月19日 10時00分)味の素冷凍食品『冷凍餃子フライパンチャレンジ』SNSで集まったフライパンから新たなフライパンへ!

間違いを逆手に!「0点ミュージアム」が示す創造力の価値

フレーベル館が仕掛けた「0点ミュージアム」は、子どものテストで“正解を外してしまった”解答を金の額縁に入れて展示するイベントです。通常なら「ミス」と片付けられる0点回答に光を当て、「そこにこそ独創性やおもしろさが隠れている」と問いかける逆転の発想が注目を集めました。

学校や塾、Webなどを通じて全国からユニークな回答を募集し、イベント会場で披露。子どもたちの豊かな発想力が詰まった回答の数々に、来場者は驚きと笑い、そして深い感銘を受けます。新聞やテレビでも取り上げられ、受験やテストの“正解至上主義”を見直すきっかけになったと評価されました。結果としてイベントの巡回や出版化が進み、「AI時代にはむしろ間違いから生まれる発想こそ重要」というメッセージが広く浸透。間違いを否定するのではなく、「そこから新しい価値が生まれる」と肯定する姿勢が大きな反響を呼んだのです。

●参考

https://prsj.or.jp/pr-award/list/list2018/prag2018_silver_02/

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000031335.html

https://report.iko-yo.net/articles/12867

ヒント

  1. ネガティブを“宝の山”に変える
    クレームや失敗、空き家の増加などマイナス要素が大きい課題ほど、視点を変えれば新しいチャンスが隠れています。真摯に向き合い、ユーザーや地域とともにその可能性を探る姿勢が、多大な注目と成果をもたらすのです。
  2. 主体者を“逆転”させる発想
    さかさま不動産のように、通常なら“物件を紹介する側”が主導するところを“借り手のやりたいこと”を先に募るなど、ロジックを逆にすると思いもよらないマッチングや熱狂が生まれます。
  3. 間違い・失敗を肯定する文化
    0点ミュージアムは、子どもの間違いを“価値ある発想”として展示し、学びの新しい可能性を示しました。完璧を目指すより、“あえてズレた視点”にこそ創造性が眠っている場合も多いのです。
  4. プロセスの可視化で信頼を獲得
    課題解決の過程を公表するのはリスクも伴いますが、味の素のように情報をオープンにすると「企業の誠実さ」が伝わりやすく、共感と話題を呼び込みます。隠さず見せる勇気が信用を築く鍵です。

まとめ

逆転の発想は、常識をひっくり返すことでネガティブをプラスに変え、社会や消費者の好奇心を刺激する強力な手法です。今回紹介した3例はいずれも、課題を大胆に乗りこなす創造力を示しました。こうした発想はマーケティングのみならず、多様化するあらゆるビジネスや教育の現場でも一層の可能性を拓いてくれるでしょう。

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