2019年、激戦のアメリカ大統領選挙が日本でも大いに注目されました。さらに年が明け、トランプ大統領支持者が連邦議会議事堂へ乱入するなど、今後も混乱が大きくなることが懸念されます。
そのポストをめぐり、これほど社会を左右する「アメリカ合衆国大統領」という存在はいかにしてうまれたか? 歴史を理解しておくと、今後のニュースを一歩深い視点からみられるはずです。
4コマで「アメリカ合衆国大統領誕生の物語」
解説
1776年、イギリス領北アメリカの13植民地が独立を宣言
1607年、イギリスが初めてジェームズタウンに植民しました。以来、北アメリカの大西洋沿岸(東海岸)には、13州のイギリス領植民地が成立します。植民地はイギリス国王や貴族が領有し、それぞれ個別に統治していました。
1775年、13州がイギリスの重税に反発し、独立戦争を開始。翌1776年に独立宣言を発し、1781年には独立戦争に勝利しました。
この頃のアメリカ、現在のような連邦国家ではなく、あくまで独立した州による連合でした。
1787年、憲法が制定されアメリカ合衆国が誕生
やがて、連合体制の弱さが露呈し、中央集権的な国家の必要性が検討されはじめます。1787 年5 月、13 州のうち ロードアイランド州を除く12州の代議員55 人がペンシルバ ニア州フィラデルフィアに集まり、話し合いが行なわれました。
会議では、強力な中央政府の設立を提案したバージニア案と、各州に引き続き自治権を与えるニュー ジャージー案が出されました。
1787 年に署名されたアメリカ合衆国憲法は、バージニア案とニュージャージー案を折衷したもの。行政、立法、司法の3部門からなる連邦政府を設立し、各州は同数の代表を連邦議会上院に送る、と取り決められました。いっぽう、連邦議会下院議員数は州の人口に基づいて定められました。
1789年、初代大統領にジョージ・ワシントンが就任
合衆国憲法では、任期4年、各州の大統領選挙人が投票する間接選挙制が定められました。いずれも現在に引き継がれる基本的な枠組みです。
そして、1789年ジョージ・ワシントン初代大統領(在任1789~97年)が選出されました。ワシントンはバージニアの有力な農場主で、アメリカ軍司令官として独立戦争を勝利に導きました。
ワシントンは合衆国憲法制定会議で議長を務め、憲法発効とともに初代大統領に推されます。国民的英雄への大きな信望によって、連邦政府の権威も確立されました。
「ヨーロッパの主要諸国がすべて世襲君主制を持っていた時代に、限られた任期の大統領制という概念は、それ自体が革命的なものだった」(エイブラハム・リンカーン、第1期就任演説、1861年)
アメリカ合衆国大統領は世界で最も強大な権限を持つ職務のひとつ
アメリカ合衆国はイギリスによる過度な権力行使に反発して生まれた国です。ひとりに強力な権限を与える大統領制に、警戒する意見もありました。しかし議論の末、連邦政府と州政府、三権分立の均衡の下、厳しい抑制の中で任務を遂行するシステムが選ばれました。
アメリカ合衆国大統領は法を執行する行政府の長であり、軍の司令官です。同時に、司法と立法にも渡る広範な権限を持っています。
現在の大統領は次のような権利を行使することができます。
・連邦議会の承認を必要としない大統領令を発することができる
・大統領は議会が可決した法案に対しても拒否権を発動できる
・議会に対して自身が必要と見なす立法措置を提案できる
・上院の承認の下、最高裁判事を含む連邦裁判所判事を任命できる
・連邦法違反で有罪となった者に対して恩赦を与えることができる
アメリカン・センター・ジャパンは、大統領職を次のように評しています。
米国の大統領職は、世界で最も強大な権限を持つ職務のひとつである。
https://americancenterjapan.com/aboutusa/translations/2561/
絶大な権力をめぐって、今後もさまざまなドラマがうまれることでしょう。