携帯電話料金は4割安くなる――菅総理が発言して話題となり、実際に各社が値下げに乗り出しました。携帯キャリアの業界は価格が下がりづらい状態にあったのは確かで、政治がその是正を求めたのです。
なぜ、今まで値下がりしなかったのか? 「寡占」の仕組みをおさらいして理解しましょう。
4コマで「寡占」
解説
さまざまな売り手が自由に参加し、競争するのが市場の基本的なルール。しかし、それだけに任せていると、好ましくない状態におちいることがあります。「市場の失敗」と呼ばれる状態で、そのひとつが「寡占」です。
自然のままの市場経済だけでは、社会はうまく回らないと。
生産規模が大きいほど、ひとつの製品をつくるコストが下がるのは、イメージできますか?
はい。仕入れが安くなったり、労働力や機械を上手につかったりと、多くの業界で効率よく商品やサービスをつくれると思います。
これを「規模の経済性」と言います。そのなかで、売り手が自由に競争するとどうなりますか?
買い手は安い商品を買います。大規模生産のできる売り手が有利ですね。
すると、小さな企業は淘汰され、大企業がより市場のシェアをとる、という循環がうまれます。
新規参入も難しくなりそうです。
こうして、一社だけが市場を支配するのが独占。数社で競争するのが寡占です。
自然な流れですし、競争があるなら、悪い状態とは言えないのでは?
ところが、そうとも言えないのです。
一社が価格を下げて販売を伸ばそうとすると、他のライバルも値下げして対抗します。すると、価格競争がはじまって売り手の利益はどんどん削られていきます。
どの売り手にもハッピーではない…。
そうなんです。
各社が協定を結び価格を申し合わせ、恣意的に市場を分割するようなことをすれば、「カルテル」といって違法になります。
しかし、各社が申し合わせわけでもなく、自然に価格競争を避ける動きをすることがあります。
わずかな企業で市場を支配しているから可能なことですね。完全に自由参加、自由競争のなかでは、抜け駆けして販売を増やそうとする人が現れるでしょう。
はい。こうして寡占市場では、影響力の強いプライス=リーダーの価格に他の企業が従い、価格が硬直することがあるのです。
価格が下落しにくいため、「価格の下方硬直性」と言います。
携帯キャリアのように、大手3社で市場を分け合っているような寡占業界は、価格の下方硬直性がうまれやすいのですね。