自国の産業を守る保護貿易か、他国との輸出入を活発におこなう自由貿易か。グローバル経済が大きく転換するなかで、たびたび議論になります。このテーマを考えるには、イギリスの経済学者デヴィッド・リカードが発見した「比較優位」の原理を知ることが役に立ちます。
4コマで「比較優位」
解説
唐突ですが、ピッチャーとしても、バッターとしても、すばらしい実力を持った選手がいたとします。二刀流で活躍するか、どちらかに専念するか、どちらがよいと思いますか?
ずいぶんと突然ですね!
二刀流で可能性を追求してほしいです!
個人的には私もそう思います。
しかし、「比較優位」の原理に基づけば、どちらかに専念したほうがよさそうです。
二刀流は限られた時間で、バッティングとピッチングを均等に練習することになります。しかし、例えば投球の技術に特化したほうが、ピッチャーとしてのレベルは上がります。代わりに入る野手の実力が劣っていたとしても、チームとしての総合力が上がる、という考え方ができます。
なるほど。その考え方が、社会全体にも当てはまるのでしょう?
はい。ひとつシミュレーションしてみましょう。
A国とB国がそれぞれ200人の労働者で、リンゴとミカンを生産するとします。100人ずつ均等に労働力を分けた場合、A国はリンゴを100kg、ミカンを50kg生産できます。B国はリンゴ90kg、ミカン30kgの生産力があります。
リンゴもミカンも、A国のほうが生産効率が高いですね。
絶対的にはそのとおりです。A国がB国に対して、絶対優位な状態です。
一般的に「優位性がある」といえる状態です。
はい。比較優位はちょっと違った考え方をします。
同じ100人の生産力は、リンゴはA国100kg/B国90kg、ミカンはA国50kg/B国30kgでした。この事実は、B国はA国に対し、リンゴは9割、ミカンは6割の生産力を持っている、ともいえます。
この場合、B国はA国に対し、リンゴ生産のほうが優位になります。これが比較優位です。
「ミカンよりリンゴをつくるほうが得意」な度合いは、確かにB国のほうが大きいです。でも、それが優位といえるかは、まだよくわかりません。
お互いが比較優位にある商品に、より多くの労働力を投下するとどうなるでしょう。例えば、A国は20人でリンゴ、180人でミカンをつくります。B国は全員がリンゴを作ります。
A国の生産量はリンゴ20kg、ミカン90kg。B国はリンゴが180kg、ミカンは0kg。合計でリンゴ200kg、ミカン90kgだから、どちらも増えている!?
均等に労働力を使っていたときは、リンゴ190kg、ミカン80kgでしたね。ともに10kgずつ増えています。
各国が得意分野に特化して生産し、足りないものは貿易によって賄うことで、より多くのものを得ることができる。これが、比較優位の考え方です。
現実の貿易は多国間で、もっと複雑な事情があるのでしょう。しかし、自由な国際貿易がお互いの利益になるという原理は理解できました。