「市場の失敗」を4コマストーリで
「市場の失敗」を一から整理しよう
資本主義のベースは誰もが自由に参入し、競争できる市場経済です。市場経済では、需要と供給のバランスで自動的に価格が決まり、その結果、社会の利益が最大化されるという考え方が資本主義を支えています。
しかし、自由な市場経済だけではうまく行かない場合があります。「市場の失敗」です。
市場の失敗が起こる原因① 独占&寡占
市場の失敗が起こる原因はいくつかあります。そのひとつが、あるカテゴリーの商品を特定の企業だけが生産し、供給する独占や寡占の状態です。
大量の商品を生産し、販売できる企業は設備や労働力を効率よく使えます。その結果、商品ひとつあたりの生産コストを下げ、たくさんの利益を得られるようになります(規模の経済)。
当然、たくさんの資本を持っている大企業が有利です。小さな企業は対抗できず、競争から脱落してしまうかもしれません。この状態がどんどん進むと、競争相手を淘汰していった企業が、市場を独占、寡占するようになります。
競争がなくなれば、価格を下げたり、品質を上げたりといった努力をしなくなります。社会の利益にはならず、市場の原則からいえば「失敗」となるわけです。
市場の失敗が起こる原因② 売り手/買い手の情報の格差
商品に関する重要な情報を売り手だけが持っていると、公正な取引ができない可能性があります。「情報の非対称性」と呼ばれる状態です。
例えば、幽霊が出没するという中古マンションがあったとします。
不動産会社はそのことを知っていても、借り主は内見だけで、幽霊の存在を見抜くことはできません。重大な欠陥があるにもかかわらず、実際の価値以上に高い価格で売られてしまうリスクがあります。
情報の非対称が横行すれば、買い手は欠陥を警戒するので、必要以上に価格が下がる可能性もあります。
市場の失敗が起こる原因③ 公害と公共性
工場が出す排煙や汚水は、さまざまな社会問題を引き起こします。
工場が操業して商品を生産すれば、企業はたくさんの利益を得られます。需要が満たされた消費者もハッピーです。しかし、公害が起これば近隣住民は健康を害したり、農業や漁業ができなくなるなど、多大な被害をうけます。
この問題は、市場経済のメカニズムだけに任せていると解決せず、社会全体の利益を損なうことになります。
また、公共性の高い商品やサービスも、市場経済では維持できないことがあります。例えば灯台は、費用を払うことなく誰でも利用できます。社会のために必要な設備ですが、つくっても利益を得られないので、市場経済の中では誰も生産しようとはしません。
こうした「公共財」は、政府が供給する必要があります。
まとめ
現代の資本主義国は、市場の失敗を避けるよう適宜経済に介入しています。例えば「独占禁止法」のような仕組みは、公正な競争を確保することが目的。公害に対しては、排煙や排水を取り除く義務を負わせたり、税金を課すなどの施策が必要です。