今回のお話は、まさに高度成長期を迎えていた半世紀前の千葉県松戸市が舞台です。
急速な経済成長に伴い、1962年(昭和37)に11万人だった松戸市の人口は、1969年(昭和44)には23万人を突破。7年間で2倍以上に人口が急増したものの、多様化する市民生活に行政のサービスが追いつかない状態でした。
市役所は、ややもすると「市民の要望がたらいまわしにされている」「役所は働かない」という、不名誉なレッテルを貼られがちでした。
そんな中で「不名誉なレッテル」を払拭し、後に全国に広がるサービスが生まれました。
4コマで課題解決ストーリー
課題解決ストーリー詳細
当時の松戸市長は、民間企業出身の松本清氏。「マツモトキヨシ」で有名なドラッグストアを創業した経営者です。松本市長は「市役所とは“市”民のために“役”立つ人のいる“所”」であり、市民の役に立つことを迅速にできないだろうか、と考えたと言います。
松本市長の主導で発足したのが「すぐやる課」です。市長室のすぐ隣の部屋で、課長と職員の2名でスタート。初仕事は人探しの依頼で「うちの主人が千葉県南部へ県道の大会に参加すると言って家を出たが、子どもが熱を出して困っている。主人を探して欲しい」というものでした。
その後、すぐやる課への依頼は殺到し、発足からわずか4日で6人体制に。市長は自分が乗ったタクシーの運転手をも引き抜き、1か月で6人の体制ができあがります。
「すぐやる課」はマスコミにも取り上げられ、話題は日本中へ広がりました。
こうした波及効果は1年で全国に43の類似セクションができたことでもわかるでしょう。海外でも「すぐやる課」の話題を聞いてフィリピン、台湾からも視察にやってきたほどでした。
スローガンは「すぐやらなければならないもので、すぐやり得るものは、すぐにやります」。その精神は半世紀たった今でも、松戸市のすぐやる課に受け継がれています。
「お役所仕事」と揶揄されるように、行政のサービスは不親切で融通の効かないイメージがつきまといます。実際に読者の皆さんも、役所で依頼や相談をたらい回しにされた経験はあるのではないでしょうか。
「これだからお役所は!」と言いたくなりますが、私たち自身の仕事へのスタンスを省みるとどうでしょう?
サービスを提供する立場に立つと、「すぐやる」を実践するのは簡単ではありません。面倒な仕事を後回しにしたり、誰かがやるだろうと見ないふりをしたり…。すぐやればよいのはわかっていても、忙しさにかまけて怠ってしまうことがないでしょうか?
10月6日はちょうど50年前に、市長室の横で2名体制のすぐやる課がスタートした日。私たち自身の仕事を見つめ直す良い機会でもあります。
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