4コマで「国家緊急権」とは? 世界と日本の違いをわかりやすく

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私たちは2020年、コロナ禍という「有事」を経験しました。多くの国の憲法は、有事にのみ発動される「国家緊急権」を認めています。みなさんは、国家による私権の制限をどのように考えますか?

4コマで「国家緊急権」

解説

日本をはじめ、世界の国々は「立憲主義」を採用しています。権力者が好きなように国民を支配するのではなく、法に従って権力が行使される政治の原則です。

そのための根本原理を定めたのが憲法です。立憲主義国家は、国民の基本的人権を保障し、権力を分立することで、その濫用が行なわれないよう規定しています。日本では、行政権(内閣)、立法権(国会)、司法権(裁判所)の三権が互いにチェックし合い、特定の国家権力が暴走することを防いでいます。

バランスのとれた仕組みですが、平時の統治機構が常に機能するとは限りません。戦争や内乱、大規模な自然災害、そして感染症によるパンデミックなどです。

こうした非常時に限っては、危機を乗り越えるため政府や軍隊が権力を掌握するべきだ、という考え方があります。実際、多くの立憲主義国家は、国家権力が憲法の一時停止などの非常措置をとる「国家緊急権」を、憲法そのものによって認めています。

コロナ禍にあっても、世界の多くの国々はロックダウン(都市封鎖)を行い、罰則付きの外出禁止などの措置をとりました。

例えば、アメリカのニューヨーク州は原則100%の在宅勤務を義務付け、出勤禁止に違反した事業者に罰金を課しました。フランスは買い出しや通院などを除いて外出禁止とし、違反を4回繰り返すと約44万円の罰金と半年の禁固刑という厳しい対応をとりました(2020.4.7日経電子版)。
いずれも、国民の権利を著しく制限する対応です。

いっぽうで日本国憲法には、国家緊急権を定める規定がないと言われています。政府は緊急事態宣言を発したものの、内容は不要不急の外出自粛を「要請」するにとどまりました。

非常事態に罰則など強制力のある対策がとれないことが問題視され、法改正の議論も進んでいます。いっぽうで、権力の暴走を警戒する意見も少なくありません。

欧米と同じようなロックダウンができないことはよく知られていますが、これは国家緊急権を認めるか否か、という憲法、統治の根本に関わる問題です。「国家緊急権」の視点から、私たちの国のあり方を考えてみてはいかがでしょうか。

まとめ

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